ディナシーの手記 day1〜とある商業都市にて〜

中央に大きな時計台、そして古風な町並みが広がるこの商業都市は「コックテール」という名前だそうだ。 飲み物の名前が付いているのも滑稽だが、住人たちも非常に個性的な人たちばかりである。
古風な町並みからは浮いた雰囲気の神社に住む渡り巫女さん。描いた筆跡を実体化できる画家が経営しているなんでも屋さん。 図書館に住まう、笑顔がかわいい赤い髪の天使さん…などなど。上空にはなんと二本足でほうきに乗る青い魔法使いもいるという。 そのほかの住人たちも、みんなのんびり、そして自分らしい生活をしている。
私はこれまでさまざまな世界を渡り歩き、殺伐とした世界や死と隣り合わせの危険な世界、心が押しつぶされそうな切ない世界も経験してきた。
しかし、この都市はとても暖かい雰囲気を感じ、これまでの殺伐とし、危険で、切ない思いがすべて昇華された。 故郷での「王」としての執務を忘れ、このままこの都市で暮らそうか…と思うほどである。

現在この世界は外の世界から原因不明の封鎖状態となっており、この都市の外に出ることができない。

―――いつか解ける日が来るんだろうか。
そんなことを思いながら、こののんびりした都市の喫茶店で、ほんのりあたたかいミルクを味わうのだった。

04.08 daione


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